May 23, 2009
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北海道大学を中心とする研究グループは、従来、複合糖質の中でも特に解析が困難であった糖脂質、グリコサミノグリカン、O-結合型糖鎖の解析技術を開発。胚性腫瘍細胞などのモデル細胞を用いた検証試験の結果、これらの方法が細胞の複合糖質の構成を詳細に明らかにすることを実証するとともに、細胞の有する固有の複合糖質プロファイルが高度に細胞特異的であることを確認したことを発表した。
細胞の識別マーカーは、その多くが複合糖質(糖脂質、グリコサミノグリカン、糖タンパク質など)であることが経験的に知られているが、複合糖質の解析は一般に難しいため、積極的に複合糖質のマーカーを探すアプローチをとることは困難であり、ようやく近年、N-結合型糖鎖と呼ばれる糖タンパク質糖鎖が比較的容易に解析できるようになってきた以外のクラスの複合糖質の糖鎖の解析は依然困難な状態となっている。
細胞表層の複合糖質の分析法として、抗体を用いる方法論が広く用いられてきたが、これらの方法では、詳細な分子構造が不明なことも多く、汎用性や定量性にも問題が残ることから、研究グループでは、質量分析法による精密な解析法の構築を目指し、独自に開発してきた糖鎖の精製技術や新たな標識法などを駆使して、従来解析が困難であった糖脂質、グリコサミノグリカン、糖タンパク質のO-結合型糖鎖の解析技術の構築を行った。また、確立した方法論を胚性腫瘍細胞などのモデル細胞に適用し、細胞の主要な複合糖質糖鎖プロファイリングの有用性の検証も行った。
この結果、複雑な混合物中からの糖鎖を選択的に精製する独自技術ならびに、高感度検出を実現する独自標識技術などを用いることで、すでに開発済のN-結合型糖鎖の解析法に加えて、糖脂質、グリコサミノグリカンの糖鎖の細胞や組織における発現動態を高感度に絶対定量することが可能になった。
胚性腫瘍細胞などのモデル細胞を用いた有用性の評価を検証した結果、これらの方法が細胞の複合糖質の構成を詳細に明らかにすることを実証するとともに、細胞の有する固有の複合糖質プロファイルが高度に細胞特異的であることが判明した。このことは複合糖質プロファイリングが優れた細胞記述子となることを示したものであるほか、従来は困難であった異なるクラス間の複合糖質糖鎖の発現量の相互比較が可能になることから、「細胞の顔」というべき細胞の複合糖質の構成が定性・定量的にもより明確に見えるようになることを意味する。
さらに、O-結合型糖鎖は、構造の多様性と不安定性から特に解析が困難であったが、タンパク質からO-結合型糖鎖を化学的に切り出すのと同時に、糖鎖とタンパク質の糖結合位置を同時かつ安定的に、分析に有利なようにラベルする新たな方法を確立したという。
なお、これらの技術は、従来解析が困難であった複合糖質群の糖鎖解析を改善するものであり、今後、再生医療や創薬研究において重要となる細胞の、精密な記述や評価法として貢献することが期待されるという。
[マイコミジャーナル]
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東京大学大学院医学系研究科の鈴木洋 特任助教および宮園浩平 教授らの研究グループは、細胞内のタンパク質の発現を調節し、がんなどのさまざまな疾患に関与するmicroRNA(miRNA)が、MCPIP1と呼ばれる新たなRNA分解タンパク質によって調節されていることを突き止めた。同成果は、米科学誌「Molecular Cell」に発表された。
ヒトの体を構成する細胞の中で、RNA(リボ核酸)は、通常DNA(デオキシリボ核酸)・ゲノムが持つ遺伝情報からタンパク質を組み立てる際の、遺伝情報のコピー・タンパク質の設計図として使われる。しかし、一方で、現在、タンパク質の設計図とならないRNAが細胞の中には多く含まれていることも明らかになっている。
中でも、microRNAと呼ばれる小さなRNAは、主に、タンパク質の設計図となる他のRNAを抑制することで、さまざまなタンパク質の産生を調節するというユニークかつ重要な機能をもっており、その標的とするタンパク質の種類が極めて多岐にわたることを反映して、多種多様な細胞の機能を調節するほか、発生のタイミングといった重要な生命現象、および、がんなどのさまざまな病気にも関わっていることが近年、明らかになってきており、miRNAの測定に基づく病気の診断法やmiRNAの働きを応用した治療法の研究が世界各所で進められるようになってきている。
miRNAは、細胞の中でDNAから長いRNA(miRNA一次転写産物)として作られた後、核の中でDroshaと呼ばれるRNA切断タンパク質によって切断されることで、ヘアピン状のやや小さなRNA(miRNA前駆体)へと形を変える。その後、miRNA前駆体は、細胞質でもう1つのRNA切断タンパク質、Dicerによって切断されることで、成熟型のmicroRNAへと変換され機能するようになる。
miRNAが細胞内で作られるこれらの過程はこれまでの研究で明らかになってきたが、一方で、miRNAの量が細胞内でどのように維持されているのか、あるいは、miRNAの量が細胞内で減るときにどのような仕組みで減るのかについてはほとんど分かっていなかった。例えば、がんでさまざまなmiRNAが減ってしまうメカニズムを理解するためには、特にこの謎を解明することが重要である。
今回、研究グループは、MCPIP1と呼ばれる、Drosha、Dicerとは別の新たなRNA切断タンパク質が、miRNA前駆体を分解・破壊することでmiRNAの産生を抑制することを突き止めた。
さまざまなRNAに結合するタンパク質がmiRNAの調節に関与している可能性を検討した結果、細胞の免疫応答に関係するMCPIP1と呼ばれるタンパク質がmiRNAの活性と発現量を強く抑制することが判明。詳細に調べた結果、MCPIP1は、細胞質でmiRNA前駆体をRNA切断タンパク質として破壊し、DicerのRNA切断による成熟型miRNAの産生を阻害することが見出された。
DicerもMCPIP1もともにRNA切断タンパク質だが、DicerがmiRNA前駆体のヘアピン構造の一本鎖状のループ部分と二本鎖状のステム部分の境界を規則正しく切断するのに対し(二本鎖状のステム部分が成熟型miRNAとなる)、MCPIP1はヘアピン構造のループ部分を不規則に切断することが明らかとなり、小さなRNAの誕生と破壊を司る2つのRNA切断タンパク質が細胞内にともに存在し、miRNAの産生を巧妙に調節するという新たな概念に到達した。
また、多くのがんでさまざまなmiRNAの発現異常が認められ、Dicerの発現量とがんの予後が関係することも報告されている。肺がんの遺伝子発現データを解析した結果、この解析でもDicerとMCPIP1が拮抗する関係にあることが示唆された。
これらの知見は、miRNAシステムの負の調節機構を明らかにし、miRNAが作られ機能する基本メカニズムと生命の進化の過程におけるその変遷をより深く理解し、がんなどのさまざまな病気でのmiRNAの異常を理解するための新たな視点を提供するものとなるほか、人工的な核酸などを薬として使う場合の細胞内のRNAの変化を理解し予測するためにも重要な知見であると考えられると研究グループでは説明している。そのため、この発見をもとに、miRNAとさまざまな疾患の関係に関する研究、およびこれに基づく診断・治療への応用に向けた研究が進展することが期待されるという。
[マイコミジャーナル]
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